R2年9月岬町議会一般質問/既存の町有施設を有効活用した、子どもたちの「居場所づくり」を目指して
質問の趣旨
前回の一般質問で提案した、支援を必要とする家庭で育つ子どもたちへの支援制度(みさき・キッズデリ)について、町有施設の調理室や貸し館の空いた時間を利用して、継続事業としての展開を、松尾ただしが大阪府泉南郡岬町岬町議会一般質問にて提案します。
前回の6月定例会一般質問でも提案しました、支援を必要とする家庭で育つ子どもたちへの支援制度、私は勝手に名前を命名しましたが、みさきキッズデリについてです。
前回は、現状のコロナ禍等を含む災害時、いわゆる有事の際に子育て世帯の援助が行えるような事業にと私は提案しましたが、行政からの回答を伺いながら、再度、私の中で考えると、有事の際、すぐに支援を行える体制を作るには、日頃から活動している事業でないとなかなか難しいと感じました。実は、前回に引き続き提案するには理由があります。
新型コロナウイルスの影響で、3月から学校などが長期にわたる臨時休校となり、子どもたちは一日中家で過ごすことを余儀なくされ、あるひとり親世帯の保護者から相談を受けました。いきなり休校になってしまうと、子どもが1日、日中家で一人になってしまうため、仕事を休まざるを得なくなり、収入減と食費増による生活が苦しくなっていますと。
預ける先があったとしても、そこにかかる費用がまた家計を圧迫してしまうので困っているということでした。岬町には、ひとり親世帯がおよそ120世帯以上もある中、同じ思いを持った家庭は少なくないと考えます。また、長期臨時休校の果てに学校に行けなくなった子どもたちが全国で少なくないというニュースも耳にします。
岬町で、今回はそのような児童生徒がいなかったとしても、子どもたちが、いつ、そのような辛い状況に陥ってしまうのか、理由と原因がどこにあるのか予測はできません。そこで、岬町の子育て支援、生涯学習支援の特色となる事業展開を行っていくことを提案したいと思います。この私が提案する岬キッズデリは、岬町内で住む地域や年齢、生活環境、子ども自身が抱える問題、悩み、障がいなどで分け隔てすることなく全ての岬町に住む子どもたちが集える、地域で子どもを育てる拠点づくりとも言えます。
町有施設の調理室や貸館の空いた時間を有効活用し、自身の子育てが終わり、新たなステージを迎えたベテラン世代にも協力を得ながら子どもたちがここに来ると楽しい、安心する、来たくなる、そんな家や学校とは別の居場所を作ることが目的です。
具体的には、子ども食堂の良い要素を取り入れた岬町独自の事業とするのです。子ども食堂といえば、共働きなどで子どもが家で一人になる時間が多い家庭の子どもたちの食事と居場所の提供を主な目的とし、無料や安価で食事が提供される場所として、今では多くの自治体で実施されています。
子どもたちが集まり、地域の人々とともにみんなで温かいご飯を食べることで、子どもたちの心と体の健全な成長と社会性を育める場所として、忙しい子育て世代を地域で支援するというイメージが強いのですが、この私が提案するキッズデリでは、ただ地域の方々が作ってくれたご飯を食べるということではなくて、作る工程から子どもたちが参加するというものです。子どもたちだけではなく、一緒に来ることのできる親も参加して、地域の方々から教えてもらいながら一緒に作ることで、地域の方と子育て世帯のより深い繋がりが生まれます。子どもたちにとっても地域の人と常に交流できる機会が生まれ、地元に関心を持つきっかけとなり得るでしょう。
もちろん、仕事などでその子の保護者が来ることができなくても、地域の方や参加している保護者の皆さんで、来ている子どもたち全員を迎え入れる体制を作ることができれば、どんな状況の子どもたちにも来やすい環境となります。
食事の提供だけではなく、貸し館を利用してレクリエーションやハンディがあっても一緒に楽しめるスポーツ体験事業を行うなど、様々なことが同じ場所で体験できる、学べる、遊べるということが子どもたち自身で感じてもらうことができれば、そこが子どもたちにとって居場所と認識してもらえると思います。
そして、子どもたち自身が居場所と認識してくれることができれば、有事の際にも子どもたちは安心してそこに集まることができるでしょうし、常に行っている事業の延長線であれば、臨機応変に対応することも容易になるでしょう。また、一般的な子ども食堂でよく問題になるのが、担い手と資金が不足するということです。
だからこそ必要とされるこのような事業を民間やボランティアだけに頼るのではなく、町行政が行う住民サービスの一環としてしっかりとした計画を行い、安定して行える体制を整え、住民が安心してずっと利用できる事業として確立できれば、岬町に住む子育て世帯にとっても町外に住む世帯にとっても魅力ある岬町として認識される一つの特色となり、これが地方創生の事業の一つとなる岬町にしかできないものになると私は確信しております。行政だからこそできる、そんな事業展開を行えるのではないかと考えますが、いかがでしょうか。お答えをお願いします。
●岬町 松井しあわせ創造部長 の答弁
今、議員説明していただきました子ども食堂の観点から現状について説明をさせていただきたいと思います。議員ご紹介いただきました子ども食堂は、地域住民や自治体が主体となり無料、もしくは安価で子どもたちの食事を提供するコミュニティの場です。現在、子どもたちの食事提供の場としてだけでなく、家事をする時間のない家族などが集まって食事をとる場所もございます。子ども食堂のメリットは、手作りの温かい食事が無料、または安価で食べられることができることや、アットホームな雰囲気でみんなと食事ができること。さらに、子ども同士のコミュニケーションを取ることができる反面、課題もございます。
子ども食堂はボランティアを初めとした多くのスタッフが必要ですが、本町ではボランティアの高齢化が進み、協力していただけるボランティアの確保が困難であると考えております。
また、事業開始に当たっては光熱水費などの運営費や食材料費も日々必要で、さらには食事を提供する上でアレルギーを持つ子どもへの配慮も必要となってきます。このように、子ども食堂には多くのメリットがある反面、事業開始に当たっての課題も多く、慎重に対応する必要があることから、現在、本町には子ども食堂はございません。
●岬町 澤教育次長 の答弁
私からは教育委員会の立場からキッズデリ事業についてお答えをさせていただきます。子どもたちや地域の方々との交流を主とした生涯学習事業としましては、親子夏休みイベントとしまして勾玉づくりなどの歴史体験教室、町内の河川に生息する生き物を観察する自然体験教室や天文教室などを実施しております。
また、各種団体と連携した事業としましては、青少年指導員協議会主催の夏休みキャンプ事業や、岬ライオンズクラブと共催する橘逸勢書道教室のほか、PTAなどの団体が主体となった親子料理教室を開催した実績があります。
キッズデリ事業の実施に当たりましては、先ほどのしあわせ創造部長からの答弁にもありましたように、ボランティア等の人材の確保や協力、食材等の運営費や施設の選定、アレルギー対応など多くの課題があり、現時点では事業として実施することは難しいと考えております。
現状、私が提案するようなキッズデリや居場所づくりは岬町では難しい、できないということで、とても残念です。私はそうは思わないのですけれどね。松井部長からもあったように、全国にある多くの子ども食堂で抱える問題として人材確保というものがあると思います。
人と人との助け合いの気持ちで成り立つボランティアに従事してくださる方は、何にも代えられない地域の財産ともいえるでしょうね。ただ、そのボランティアが集まらないから事業が行えないという逃げ道にするのではなく、必要な事業であれば、それに見合う対価を用意し、人材を確保する検討も必要なのではないでしょうか。
町の特色として展開していくのであれば、基盤はよりしっかりとしなければなりません。もちろん、ボランティアにお願いできるところは積極的にお願いし、その軸としてしっかりと対価を支払い、事業を展開することができれば、その事業が長く続けられる要因となるはずです。また、私が少し調べたところによると、関係各省、内閣府や文科省、厚労省などが子どもの居場所づくり事業に対し交付金や施策の予算化をしております。
そのような交付金や施策をどんどん活用すれば費用面についての課題は軽減されるでしょうし、私であれば率先して活用したいと思います。そして、教育次長からお答えいただきましたが、地域と子どもの交流事業についてはもちろん、その時々で行われるイベントは、子どもたちにとって大変貴重な経験になり思い出になることでしょう。
過去に行われた実績も大切ですけれども、現在も続いている事業があるならば、それをベースに私の提唱するキッズデリで定期的に行えるような事業として検討できるのではないかと思うんですね。同じカテゴリーの行事内容で種別化する様々な方法が考えられると思います。
私は以前、学校と地域がさらに連携することで、学校や子ども、また地域が抱えるそれぞれの課題解消法が出来、ひいてはそういった中で育った子どもたちは町で育ったことに誇りを持って町に留まるとか、または、出ていったけれども帰って来るようになる。そういう施策というか、ソフト作りが地方創生であるのではないかということを以前ここで提案しました。
そして、その子どもたちが、今度は大人になった時、地域の人となった時でも、同じように子どもを支援するようになる。これが、当時、私は子育ての循環型まちづくりではないのかと提案しました。
これも同じだと思うのですね。子どもと地域が日頃から接して色々な事業を共にする、これが結局、子どもの時の思い出であったり、良き思い出になって、そして、また岬町に帰って来よう、そういう気持ちにさせる事業に繋がると思うのですね。せっかくある町有施設、ぜひ最大限に子どもたちのために活用して、岬町に住む方々にとって価値のある施設となるよう、そして、子どもたちにとって居心地の良い拠点を作れるような事業展開を子育て世帯に優しいと、町は謳っているのであれば、前向きに検討していただきたいと強く要望しておきます。